半額白菜と、私という名の暴君。〜一人鍋は、寂しさではなく「独裁」である〜

シンクの隅で、スポンジの命日が静かに執り行われている。
泡立つことをやめ、ただの「湿った長方形」と化した戦友。

そんな残骸を横目に、私は今夜の主役をまな板に叩きつける。
スーパーの閉店間際、熾烈な争奪戦を勝ち抜いて手に入れた、黄金に輝く「半額の白菜」。

かつての私が夢見たご褒美は、摩天楼でいただくフルコースだったけれど、
今の私にはこの「50%OFF」のシールこそが、勲章のように眩しいんだよね。

世の中が説く「丁寧な暮らし」という名の、無菌室のようなファンタジー

白湯を飲み、季節の花を飾り、整った食卓を囲む……。
あれ、制作費数億円のCG映画かなにか? 一般公開されてる?

今夜、私はご褒美のハードルをマントルまで掘り下げ、
自分を「愛すべき珍獣」として保護することに決めた。

土鍋に半額の白菜をこれでもかとブチ込み、煮込むこと数分。
立ちのぼる湯気、とろける葉先、そして溢れ出す出汁の旨味。

……美味い。震えるほど、美味い。
この白菜の甘みは、
私にとってはスワロフスキーのシャンデリアの下で浴びるドン・ペリニヨンと同じ価値
いや、胃袋にダイレクトに響く分、白菜の圧勝だよね。

部屋の明かりを叩き落とし、小さなキャンドルを灯せば、
カオス化したこのリビングも、不思議と「歴史ある修道院」に見えてくる。

視力が絶望的に落ちてきたおかげで、散らかった洗濯物すら「聖なるオブジェ」に早変わり。
老眼は、宇宙がくれた天然の画像補正フィルター。
これ、全人類の共通認識にしたい。

鍋の熱を全身に浴びながら、手のひらで頬をサンドイッチする。

今日もお疲れさま。呼吸してるだけで、もう二兆点! 殿堂入り!

誰かの正解をトレースして窒息するより、
一人鍋で自分の本能をシャウトするほうがよっぽどロックだよね。

さあ、画面を閉じて。
今夜は、私という名のパラレルワールドで、心地よく暴君になる時間!