土、私を温める。

指先に伝わる、凍てつく土の記憶。

2月の終わり。
スーパーの片隅で、ひっそりと出番を待っていた泥つきの根菜。

寒さに耐え、甘みを凝縮させたその無骨な姿。
飾る必要なんて、どこにもない。

ただ、その力強い生命力を、
今の私の身体にそのまま移し替えたいんだよね。

『丁寧な暮らし』のオーディション、私は一次審査で書類落ちした組。

一日中、外の世界で自分を律し続けた夜にまで、
自分の「心地よさ」を後回しにすること。
それが一番、自分を冷えさせてしまう原因じゃない?

これで、いい。
ただ茹でただけの里芋。無造作に焼いた大根。

この不器用で、熱々な一皿こそが、今の私にとっての、リアルな救い。
雑であることは、

自分を投げ出すことじゃない。
今の自分の「温まりたい」という本能に、一番誠実であるということなんだよね。

味付けは塩とオリーブオイルだけで、冬の甘みを飲み込む。

泥つき根菜だって、
私が「これぞメインディッシュ」と決めれば最高級のフルコース。

これこそが、
自分を芯から温める、最高の儀式だと思わない?

情報の波を遮断するために、スマホは遠くへ。
視力が落ちてきた今の私には、この暗さがちょうどいい。

私は、私のままで、いい。
不揃いな自分に、全力で「合格点」を出す時間。

お風呂上がりの肌に触れる。
指先から伝わるのは、

今日を自分らしく終えた「私」の温度。
心は永遠の18歳。

代謝だけが勝手に反抗期に入って10年以上経つけれど。
2月の寒さを飲み込み、不器用な自分を愛でる。

それだけで、心は何度でも新しくなれる。
自分の最強の味方は、いつだって自分自身。

灯を消して暗闇に残る、かすかな大地の残り香。